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執筆者の写真HIKO HYAKUSOKU

フェイスリフトのトラブル/糸によるリフトのトラブル

【フェイスリフトのトラブル】

フェイスリフトには、大別してフル・リフトとミニ・リフトがあります。


1. フル・リフト

これは、耳の上から首のエラの部分まで切って、頬から口角部までの皮膚を剥離し

て、皮下のSMASと言う表情筋の筋膜に当たる薄い膜もかなり剥離して引張り余っ

た皮膚と共に切り取って縫い付ける方法です。


2. ミニ・リフト

これは、切除する皮膚も剥離して引っ張るSMASもより控えめにする、と言ったらい

いでしょう。フル・リフトと違い、局所麻酔でも手術可能です。但し、効果はもちろん

フル・リフトの方がありますが、白人のシワに比べると日本人では皮膚に弾力性が

あるため、ミニ・リフトでもかなり効果的です。

では、いかなる後遺症やトラブルがあるでしょうか。


1.瘢痕ケロイド

方法に拘わらず、フェイス・リフトにまつわるトラブルで多いのは、キズアトが目立っ

たり、瘢痕ケロイドになることです。正しい手術では、キズアトは耳の上、前、耳た

ぶの前後、首のエラの裏側にできます。これらのキズアトはケロイドになることはほ

とんどなく、年余を経て目立たなくなるものですが、手術後半年までは目立つ方も

確かにいます。治療として、ステロイドの注射や貼るテープを使用してもらうこともあ

ります。


2.耳たぶの変形

次に多いのが耳たぶの変形です。ベテランの形成外科医では変形しないように、

気をつけますが、経験の少ない医師の執刀ではまれにあります。


3.脱毛

特にフル・リフトにおいて、モミアゲ部分から耳の上にかけての脱毛やモミアゲがな

くなってしまったという方も診察したことがあります。脱毛はいずれ生えることが多

いのですが、モミアゲなど毛の部分を切り取られてしまったら生えては来ません。 

有毛部の皮膚剥離によって脱毛した場合は、3ヶ月位で元の様に生えてくる場合が

多いのですが、半年経っても生えない場合は、永久脱毛になってしまったかも知れ

ません。不可逆的後遺症ということで、施術医師と話し合う必要があります。


4.顔面神経損傷

特にフル・リフト手術で、顔面神経の損傷により「眉毛が上がらなくなった」とか、下

口唇の運動障害により、「口周りの表情の対称性が失われた」、というトラブルもあ

りました。神経を切断していない限りビタミンB12製剤の投与などで半年から1年

で自然回復することが一般的です。しかし、完全に切断された場合は、術後早い内

に神経を再縫合しない限り治る可能性は低下します。



【糸によるリフトのトラブル】

切らないフェイスリフトということで、埋没糸を下口唇から口角の横の部分とコメカミ

付近に埋没糸を通し、皮下組織を吊り上げる方法が「小顔形成」として、「フェザーリフ

ト」などと称して盛んに宣伝され行われています。

大半は目的を果たしているのかも知れませんが、私は多くの合併症・後遺症を診

察してきたので、素直に良い方法と認めることができません。


1.顔面の腫れ

一番多いトラブルは急性期では顔面の腫れです。原因は何らかの菌が侵入したこ

とによる感染です。これは、丹毒と同様に血液検査にてCRP値を測り、高値であれ

ば抗生物質の投与が必要です。

感染以外では異物反応による炎症が考えられます。この場合、ステロイドの投与と

糸の抜去が必要です。しかし、感染による場合のステロイド投与は禁忌ですので、

血液検査でCRP値の確認が必須ですので、無闇に投与してはなりません。

さらに、顔面内部での出血により血腫が生じている場合もあります。大病院か大学

病院を受診した方が良いと考えられるならば、施術医が紹介状を書かなければな

りません。書いていただけない美容クリニックは避けるべきです。


2.表情の引き攣れ

施術後大分経過しての後遺症には、表情を作った時の顔の引きつれがあります。

特に笑ったときに起こりやすいようです。


3. 感染による排膿

次に多いのは、糸による感染で生じる排膿です。吸収糸・非吸収糸に限らず生じ得

ます。この場合も糸を取り除く必要があります。そのため、糸の刺入口にキズアトが

遺ると思います。


4. 顔面神経の傷害

ごくまれに顔面神経を損傷して、例えば側頭枝では眉が動かなくなったり、下顎縁

枝では表情によって反対側の口角が下がってしまうこともあります。炎症の波及に

よるものでしたらいずれ回復しますが、直接損傷した場合には、回復せず顔面の非

対称が遺ってしまう危険もあります。


5. まとめ

吸収糸にせよ、非吸収糸にせよ、不潔な施術や糸を刺入した孔(あな)から、菌が

侵入することがあります。埋没糸を抜かないと完治しないことが多いと思います。

埋没糸が吸収糸であれば半年から1年位で糸がなくなり、リフトの効果が薄れるな

いしはなくなり、元に戻ってしまう可能性があります。糸の周囲にできた瘢痕組織が

効果を維持するという説明をされることもあるようですが、生体内の瘢痕組織は必

ずほとんどの確率で吸収されるのでそのような理屈は通りません。

実際、10年ほど前に大手の美容外科チェーンを相手取った集団訴訟があり、私も

裁判のために意見書を書いたことがあります。


スクエアクリニック公式HP


警鐘!美容医療の落とし穴: 〜美容外科・美容医療に 纏わるトラブルや後遺症集


美容医療で死なないために: 美容外科・美容医療に纏わるネガティブな問題と近未来への提言


北岡冬木全詩集


#フェイスリフト #糸によるリフト

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