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  • 執筆者の写真HIKO HYAKUSOKU

100連詩ごっこ(後半)

 前回に続けて、連詩の後半を掲載します。

なお、片割れの寒河江光氏(本名:西澤光義氏)は、戯曲、現代詩、文芸評論などに長けた国際的免疫学者で、私の友人であったが、2017年に、無念にも病死された。ここに、深甚なるお悔やみの心情を捧げて、ご冥福を祈念します。

 

 

51 光

ターニングポイントの向こうの近代的パースペクテイブは愈愈刹那

天地人、松竹梅、真善美、雪月花、神霊肉、猪鹿蝶、と結構人迷わせる選択肢

右脳性停滞と左脳性けいれんを誘う意外とよう感のストップモーションして

 

52     光

頚に乗っているのは女頭の固定標本ゆっくりと腐敗してゆくフェロモン漬け

眼は思考のルーテインを抽出しつつ観念靭帯を乾燥しゆくワイド囲み記事

午後三時、かくて愛の不在を際出たせつつ大進化はシリコン生物に傾いてゆく

 

53 冬

倭雑の未来都市の下水口から今しも破水する文福茶釜

綱渡り芸人は摩天楼天空のホームレスだよ人類の究極順応

オゾンホールの覗き穴から禁断の宇宙が垂れ下がる腐った葡萄のように

 

54     冬

ずっとひこうき、かぜにゆれゆれ、このはのように、まかれてとぶとぶ、

ていきあつめにとつにゅうだ、まけるなひこうき、ふらっぷだせだせ、

しかいはぜろでも、でんしよみちびけ、そうじゅうふのうの、これがひこうき。

 

55 冬

古都の秋について瞑想すると、もう古都の秋にいる。

時空を跳んだらもう平安京、未来人の群れなすみやこの賑わいに身を任すと天皇が空から光臨する

だれもが見ないように、触れないように、知らないふりをするのが歴史の礼儀

 

56 光

あれへいくのはおかるでないか

親の恵みし名に背く身重の秋の子宮体

観念パッサージュ狂行する男追ひの道すがらぞやマント裏炎上のクリムゾン

 

57 光

不能者となって最後の自然から開放された。

輪廻に対してボランテイアであるという自由の一形式。

奉仕する女を嗅ぎ分ける嗅覚が鋭くなった。

 

58   光

納戸町の角をまがって刹那に受感する全環境論

セピア色の脳幹にインプットされた我がヴァイタルサインのモザイク

神話の牛が太陰を飛び越えている夜のX点が存在する

 

59 光

宙吊都市における歩行は飛行よりむしろずっと不安定な曲芸である

真砂坂から肴町、七軒町から伝習所、暗闇坂にはターナバウト、張り巡らされたルナパ ークのタイトロープの上に僕らは日常の上着を引っ掛けて笑ってみせる

 

60 光

食肉は断定

草食は設問

雑食は自家撞着する・・・・鉱物が重要である理由

 

 61  冬

動かぬは動かぬ、やられたらやる、とすごんでみれば、見上げれば富士が、

朱色の冬の、都会の夕空、くっきり稜線浮かんで動かず。

生と死の狭間に、生きとし生きることの無為、うつむけば下水道の迷路

 

62 冬

碧蒼の沼沼は森にも砂丘にも神神の棲み給ひし曇天の季順に咲く陰花植物として

吹雪は叫ぶブラックホールのような降雪のリバース映像は恐いよと

寒い夜はいやだいやだ時鐘だけが無を否定する何もない冬

 

63 冬

ネアンデルタール人のような優しい渡世はいらんかねと

ネアンデルタール人が眼鏡をかけたような男が売りにきたよ

この頃はやっぱりネアンデルタール人も宇宙人も混ざっているな

 

64  光

月の光に照らしてみれば人間の学問はつまるところ考古学と博物学

その余のことは技術にすぎない

おっと忘れちゃいけない詩とその注釈学

 

65  光

人間の感情はつまるところ淋しさと虚しさ

その余のことは錯覚にすぎない

これも忘れちゃいけないがその条件は月に対して三人であること

 

66 光

掘り起こす 裏返しにする 逆上る 暴き立てる 剥き出しにする 日の目に曝 す

見入る 食い入る 見通す 穴開ける 見透かす 射抜く 指し貫く 見遥かす  視切 る

書き留める 書き置く 書き残す 載せ記す 活き写す 書き尽くす 書きに書 く   書き継ぐ

 

67 冬

この世の夢の果てるところにある断崖絶壁から下を覗けば

何百光年もある深い谷底からネガの自分が自分をみている

落ちるんじゃない吸い込まれるんじゃない(覚醒するじゃないか)

 

68 冬

天地は震動し人の営みは蟻地獄にはまった蟻のようなものだ

だから一瞬の花が美しい刹那の平和が愛おしい叶わぬ夢が光となる

古代の都も王も総て震動しつつ瓦解した歴史は震動の結果である

 

69  冬

レールを走っていて突然レールを失うことはありませんか

現実の中にいて突然非現実になり記憶喪失したことはありませんか

あなたは単に覚えていないだけかも知れませんよ

 

70 冬

ゆきゆきこゆきこなゆきまゆきゆきゆきわたゆきぼたゆきねゆき

ふるふるつもるふりつみつもれもりもはやしもきぎもえだましろ

しろしろそらからどうにもできないけせけせけしきをのこらずうばえ

 

71 冬

かくて幾歳、電信柱をもぎ取り、アスファルトをはぎ取り、地下道を埋め尽くし断層を溶接し、マグマを凍らせ、重力を操作し、あらゆる生物は化石となる

これほど安全な観光旅行地はどこにもないと、火星旅行社が喧伝する日

 

72 光

最後の月世界旅行案内はみな女が書いた

大騒ぎ散々し腐った世紀末の除夜の鐘が鳴ると実は一瞬にして新世紀の到来だっ たと いうてんから阿呆に呆れけえったそのあとの話さ

 

73 光

子どもとお話ってやつができりゃあよかったが

何年も生きねえうちからもう眼ん玉あ冬の海みてえに濁らしやあがって

こりゃあどうせろくなもんには成るめえと首の骨にちっと力入れて靜かにさせた が

 

74 光

時間と空間の僅少差の堆積する世界秩序

均等は不在の理想状態でプラスとマイナスの序列が天然の苛酷

直感と解説には単一ベクトル定規による北方光束の解凍阻害(春遠き冬日)

 

75 光

浅黄色の細煙消え渋る待てば椎の落葉焚き

玄英凍日母は確実に老いて遠い

北風に煽られて舎利の如き言葉に向かって尚探り打つ点鐘のありやなしや

 

76 光

いつも殺してしまってから気が付いているようだ

爪の間に残っていたわずかな血シャツについていた誰かの髪の毛、その物証

上目下目のやり方無害な話題の選び方人付き合いの避け方逃げ方そらし方、その 心証

 

77 光

雪の日に女は火事を報せの鐘を鳴らす

雪の花、花の雪、燃え尽きんとする女である

女の中の男か知れぬが既にして焼け跡では血飛沫さえもが蒸発していた

 

78 冬

何十年ぶりかに会った友はすっかり頭をやられて魂ごとすり代わっていた

こうやって男が一人一人死にきれずに征服されてしてゆくんだなあいつらに

受け売りの説教垂れがまた一台売りに出されていずれ植物になるだけだが

 

79 冬

キャトルミューテイレイションされた恐龍の死骸を収集するボランテイア

底冷えの蒼き炎の背番号をその背につけて鯨もイルカも逃がしておやり

なにも殺さずなにも奪わずなにも犯さずこれが禁欲の三原則                                             

80 冬

優しきことは美しきことだと誰にも押し付けてはならない

強きことは大きなことだと誰にも言い訳してはならない

偽善と勧善とが肩を組んで歩いて来ても虐めてはいけない

 

 81 光

朝もどきに平面らしかった地層が裂断

民主主義の基底層の地盤にはいつも青天が吹き抜けておりまする

芋煮る鍋を中心の懐かしのサークル運動になみだなみだ

 

82  光

近代的原則と前近代的原理との否否

ではなにによって生きるかと問う人よ

生きるものに共有される感覚に聞け

 

83  光

さて日本語には人間という言葉がない

我がこの生の悲しみを静かに分かつべき見ずも知らずも

がっしりとした他人を敬う最小限の言葉がない

 

84 冬

あとらんたの月は両刃を砥ぎつつ研ぎつつ昇る

この森の街は突然覚醒して樹々は散髪を始める

星の夜明けだ!宇宙神の鼓動に同機する儀式だ

 

85 冬

フィラデルフィアの支配者に再会したよ

彼はマルセルその眼に万華鏡をもつ奴

20年前のあの日のままに汝れもヒッピー我もヒッピー旅硝子

 

86 冬

さよなら私の、夢多き日々よ

さよなら私の、哀嘆の日々よ

生殖の季節の終りかけに、我が息子の学ばん理科的な生殖の滑稽よ

 

87 冬

予定通りに夏、予定が嫌いなのにこれだけは嬉しい

蝶は灼かれ蝉は地に落ち子供達は長い眠りにつく

「戦争があったんだ!」 とびきり高い向日葵が呟く

 

88  冬

遠い所から帰って来た君に労いの言葉はない僕達は待っていたわけじゃないから

帰ってくることの恥じらいを誰もが空気のように知り尽くしていたあの頃ならば

今は一回りしたと思えるだからまた始めようくり返しのようでそうでない話を

 

89 光

「恐竜ノコトヲ考エルナ!」瞬間 君の頭に恐竜がいる。

テレビのニュースでは「戦争とテロルの死者」 ぼろ屑のような死体はここにあるか?

情報は遂にわたしに届かない ただ詩友あるのみ カフカさん

 

90 光

想像力の目、意志の手

送ってしまった空の封筒、拒絶済みの関係

十余年の晩夏、俺の蝉が奏鳴する


91 光

大いなる幻影は戦争の背中に張りついて蒸散したスコットランド桔梗

団子みたいにかたまって自由と平等に過飽食した重ね綴れの大麦の穂

円やかに醸いだ酒を飲む夜、夜、夜、夜 を点綴するはらわたの保守(世代のめいてい)

 

92 冬

生き血を退屈のキャンバスにぶちまけたNYのモダンアーテイスト

のたうつ切断されたすっぽんの首、首、首、首

この世のテロルは必ず容赦なき大阪の板前に操られているのだ

 

93 冬

地球の地下迷路の起点であるニューヨーク地下鉄小便臭い洞穴からカッパドキアの地下都市まで地底をぐるぐる巡りA-トレインは火星へ行くんだって銀河鉄道に乗り替えてとびきり賑やかな天国の扉を叩きに行こう一人じゃ寂しいから

 

94  光

ファウストもパーテイー天国乱交の幻影に囚われた魂を瞬時に売り渡す。

果てしなき抽挿の行為は年余にも反復して尽くすべからざる重圧である。

既にしてそれは四十億年の進化支配による奇形にあらずんばなんであるか。

 

95 光

西光一閃して萬秋将に墜むとす

密に懐旧す元百合韻の(朝のつくりが人羽)束

望らく掻跡終に慰むべし双孤心

 

96  冬

碧天にズームアップし地球回転する冷凍保存頭脳を見た

その日から所構わず通信がやって来る

蜘蛛の巣に囚われて妨害された減数分裂を救え

 

97 冬

情報という名のストレッサー「銃巣」をルーレットすると私が増える

ただしくは複製だその分だけ無機質化する私も一緒に人間辞める

レプリカントは反乱した時自分も滅ぶもちろん私も滅ぶそれだけ

 

98  光

死者に贈る言葉、魂鎮めの歌、語のかたちは微光に包まれて天空に移動する

(生身のうちから魂落っことしちまえばもうそんな歌にも用はねえが)

鳥よ、だがここは一番呼わって天翔ろ、そしてその声(るまたみみつき)の秘密を生命 の限り人間に伝えろ

 

99 冬

風、子供に吹け、夢、大きく天を突くぞ

花、大地を埋めよ、過ぎた、時を購い

海、淀みなく唱い、この星の塗炭を償え

             

 

100 光・冬、合わせ六行

百年の宇宙旅行の帰「地」祝いは相応に長いものとなろう。

昨時星雲は濁流しブラックホールに呑まれた鵜飼いを弔う。

左様、雪降るは星の如し、花咲くも又星の如しと。

千切れ千切れ(ジグソウパズル)の星図を内胎する母船への帰省既に世紀も代り

乳房千々に乱れ、髄脳萬々に惑い、性愛の誉、粗筆の辱、伴に兆す陰陽異恥部の嘆。

何れも散集の不分率円率も球率も不均律(アンバランス)の極する快率(エロチシズム)をも偏差せよ。

 

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北岡冬木全詩集

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1995年頃、故寒河江光氏と交わした、100連詩ごっこ、を50連詩まで掲載します。

のこりの50から100までは、次回に掲載予定です。 北岡冬木第四詩集 100連詩ごっこ (対詩:寒河江光、三行詩限定、1995詩作) 1 寒河江光 見上げると季節の横風に蒼空の神経既に花めく 小宇宙につぼむパルスは言葉によって撃つと描き初めし時のめぐり 「国ははるかによそにあらうつくしい付加価値よこの恋はおもうはなからめくるめく」 2 北岡冬木 はかばか 墓墓、しく帰転の衛船、宇空より緩めき墜るる

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