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  • 執筆者の写真HIKO HYAKUSOKU

1993年から1年、シドニーに留学




(オペラハウスからハーバーブリッジとノースシドニーを撮影)


1993年から1年、シドニーに留学した折、したためた詩の一部を以下に示します。

第三詩集 南十字星の都から

    

      1993年にシドニーに1年間住んだ。

      その時寒河江光氏と交換した連詩の片割れである。

      なお、南半球の北は北半球の南である。

 

ぺんぐいんつあー

 

逆さ次元の海流に乗り砕氷船が春運ぶ

 ああこれがあのしどにい航路なびくよ金髪ぺんぐいんつあー

遠い昔しんぐる切符の日本人が何しに来たかは

 今は誰も言わぬが華のぺんぐいんつあー

いろんな宇宙人とへんな恐龍と謎の中国人が居れば             

 どこにでも街ができたよぺんぐいんつあー

                                    

黒い雨季が突然晴転!目眩めくこの世の果ての万華郷

 花はくれない火炎花、海は群青南極海                   

鯨来たかとかもめに問えば沖の白波大津波                 

 遠く祖国に久方の大嵐天変地異ありと聞く                                                     

夢か空つか何処も都市はほんの束の間ぺんぐいんつあー            

 懐中電灯と小銭があれば誰でも行けるよぺんぐいんつあー

たとえ何にも出なくても皆で出かけりゃぺんぐいんつあー

 

注:この年奥尻島で大津波と報道された。

  ペンギンツアーはカンガルー島で経験したが、

  おおさわぎしても結局ペンギンとは遭遇しなかった。

 

 

花盛り

 

春や春、見たこともない花盛り

春や春、光る北風帆に満つる

 

祖国は遠きにあらずしかし日々に疎し

ここは異国にあらず物人とくに親しき

平かにして天変地異を知らず

食足りて人心路頭に惑わず

彩色なる野鳥飛び交う夢醒めのまた夢

 

春や春、南十字も朧に搖れる

春や春、ジヤカランダの月見酒

 

地球は遠きにありてしかし日々に恋し

ここは異星にして万象いずれも馴染まず

大気はかなく宇宙線嵐の雨霰

職単調にして人智の介在を要さず

異形の星人来襲せし悪夢の正夢

 

注:ジャカランダは豪州の桜。11月薄紫の花が一斉に咲く。

      南半球なので北風は暑い。

 


アジアは懐かしき                                                                    

 

アジアは懐かしき南回帰線を過ぐれば漆黒の大地濁色の大河原色の人獣

太古なる宗教神秘なる儀式不可思議なる歌踊いずれも希釈せず輪廻する

その北へ足を伸ばせば色淡く移りし日出ずる東の果て伝旛収束する岬

滞りし物人時として逆流せりアジアを水没させ焼灼する魔人の隷属となりき

然して烈しき迷夢の刻を超え生き延び巡り来るといふ来世の蝶群を

南の果つる街に追う我南海の黒真珠採りとなりぬ              

彩色の花鳥満々たる陽光の下瑠璃の鱗翅を翻し               

緩やかな虹となりて飛来する夢幻の条光を待ち伏す奈落

自害なる腑の白日への露呈に欲情する薔薇棘の呪縛刹那の交接と知りつつ

    

                                         アフタヌーンティー

 

「アンバランス」に欲情する倦怠のケンタウルス

バルコニーに開窓する裸体の恥部烈々

美醜の気まぐれな振動に倒錯する傍観のアフタヌーンテイー

とどめを射さない生き死にの曖昧模糊

薔薇か麝香か芳臭に窒息する最期鳴咽

 


秋桜の咲く宇宙にいて

                                         秋桜の咲く宇宙にいて、S地面を掘ったら空が出てきた都市の果てはいつも海で風の日には顔のない少女が立っていた、が、聞こえる歌は少女のではないけれど決して振り向いてはいけない秋桜の咲く宇宙にいてD.S                                                

 

 

砂丘の星

 

向日葵の無限に林立する砂丘のある星は哀しい

  コバルト色の海の蜃気楼を追跡し

    行っても行っても少女の女陰ばかりが埋まっていて歩きにくい

      都市はあまりに遠く望郷は氷詰めの骨壺に密封された

        さらに向日葵は盛大に勃り起ちて夏の空想を悦楽す

          敗残の夏、虚空の夏、陵線の夏、彼岸の夏           

            あらゆる悔恨の夏を落下傘に纏い反重力に身を任せよ

                                                   

                           

ダーウィン

 

ダーウィンは何処より来たりて一角獣の島を渡り

南方大陸の原色の花鳥に理性を盲いたか

その日遺伝子記号はいかにして解読されたか                

しかし危険のパンドラは直ちにロックせよ

間断なき自己修復の果ての発狂を                     

膨大なパラソルで隠蔽せよ

さてもDNA螺旋階梯のジャックの豆の木

降段を禁じられた不可逆の昇り龍

結末は崩落のみの未完成の進化論を撃て

 


 

干満の

 

干満の、情景に馴染む、血吐きの儀式の、やり直すべき朝のしらじら、

    返すがえすも、行ったり来たりしている内、方途は暮れる、

                                            

すべては律動、振幅の代償、縁はかすがい、ときに蝶番、

      引力弾力、縮む飛び散る、限る果てなし、生まれる死ぬ、         

    銀河は輪廻、無限の有限、有理の無理、繁殖の絶滅、

                                         

 かくて一瞬という、とてつもなく永い時間にいる奇蹟を弄べば

      何処からか空無の来たりて我が肩に、道連れへの艶めかしき危うい誘惑

 


     

春の3行詩

 

春雷のイエルサレムより逃れ来し衛兵朝霧の白盲のごと淡き回想の食     

卓いずれの食器も転回するホロスコピー飾り花は風化して存在の記憶     

だけがバルコニーで白紙の新聞を読んでいる遥かおぼろなりき思春季

 

ジャカランダの開花までの春それからの時の濁流早回転の時計の文字盤スクリ 

イン俗も非俗も呑込み流す呼吸は過呼吸夢見は先夢どこへ行っても何時か来た 

道叶わぬ恋は蒼い性器の暴行未遂逆鱗琴線いずれも電流触れたら最後茨の拷問

 

揚げ羽春型装い軽く稲妻突風難儀もいなすチョイナチョイナ

粋な黄揚げ羽蜜柑の香木軽く一越え次元も超えるよドッコイショ

トリは青筋水脈バスター蝶道きらきら末期の泉水ソレソレ

 

ジンジンジンマシンに目覚める朝の生き永らえの悪寒

蟻痒の刹那さ生臭き浜風そよそよバルコニーより入りてわが身を虐める

やんごと無きにしもあらずんばはかばかしからずや日々のいとなみ

 

突然天が墜ちてきたかのような氷嵐、翡翠の雹滴              

いつもの夏への烈しい儀式とはいえ何ゆえの神の怒りかと怯える      

今宵夥しき溝鼠の発生を予感し息苦しき闇が蜷局(とぐろ)を巻きそうだ         

 


夏の3行詩

 

銀沙殺伐する夏の展望海まで遠い緑の中の僅かな砂漠が寧ろオアシス

甦える失意の記憶に窒息しそうな慟哭を蒸散せよと一瞬に失せる影のミラージュ

日々はいつでも憂い惑い悔やみされど消え去らぬ舌の記憶を引き擦るリフレイン

 

美しいものたちの自壊をたとえば琥珀に閉じた命のかたちにしたく

転がり墜ちる瞬時を幾つも採集してきた風化とか蒸散ではなく

腐食のような異臭を伴う時の快楽しかしいまだ形にできない焦燥

 

飛ぶ鳥は墜ちずとこしえに渡り続ける衛星のように生命の輪廻逆回転を許されぬ

時の巡りのようにやがて生殖は終るそして再び始まる伝達されたジーンによって

肉は消化され肉となり夢は解体されまた夢になる死体から生まれる子供のように

                                    

蝶は哀しいよいつも一人で旅をする南海の孤島絶壁の高山渦潮の海峡

大陸を渡り多くの人や獣戦いを見た嵐も吹雪も熱風も流星雨も抜けて     

死後の記憶も鱗翅に刻印しとわに形留めよ孤高を標本にして  

 

       アデレード

自由民の新都市家々のバルコニーに時は止まり水は淀みて人は老いない

時折砂漠からの熱風樹々を灼き鳥を焦がすけれど決して誰も死ねない

コロセアムには終ることのできないクリケットゲーム恰も溶解した能楽のように

 

統制のまやかしを蒼ざめている治世者たちに諧謔の道を示せ

怒りなき憤りの時空を蓄えた暴爆それ以上の恐怖はない

多くの訓辞が暗示するだろう来るべき火薬色の雨の週末を

 

夏時間の遅い黄昏、真空の時の無言、輝かに停止する入日を、無感動に眺める

祖国から遠く、鳥のさえずりさえ言の葉を違える異国、体を嘗める海の背後に

あらゆるビーナスが、夫々の樹々の陰で、官能の儀式を夢みる、幼女のように

 

水蓮に清しき風わたり初なつの午後は緩やかに過ぎゆく

あらゆる狂気が羽を休める情景のエアーポケットに居て

いわゆる日常が唆されの儀式の連続性であることを再認識する


 

秋の3行詩                                  

 

終日(ひねもす)ゆったり紫外線の空を眺めていて盲いた

夜変換突然テストパターンのカーテンコールに夢の見直し

ハイウェイには聾唖の花売りの葬列朝まで

 

心の引出しを全部空けてもまだ引き出せるほど心は深いが何もない

手袋のように裏返してもまだ裏があるから糸口は秘密にされている

そうして秋になると秘密は噂になって人々の口から口へと徘徊する

                         

亡き人はいつも秋の顔をして橋の向こうで待っている            

すすきおみなえしわれもこうはぎききょうりんどうきく           

かおは明るくこころは寂しい花の祭壇

                       

ひそひそ話の集回する脳室の中空をうろうろしていると葬儀の時間がきた

枯れススキを菊花の代わりにあなたに捧げよう死に花に彩りは不相応です

悔恨も未練も恩讐も乾燥して風化しゆく秋の冥土は虚無の行き止りです

 

ローダンセの人は命はかなく日記の栞になった

  いろもあせて香りも失せて煙のような紙になった

      あの秋はさらに遠のき肉の余韻も幽かになった

 

秋の樹々は青空ヘインベージョンする神経系統

転落への兆しに自虐する負のマスターベーシオンを伝達する

そして影と夜が長くなると冬への旅行きため息が白い

                      

長雨の街町の瓦が黒く濡れる情景を懐かしむ                

西国の秋の肌合はしっとりと記憶を嘗める                 

いくら考えてもあれほど雨の降る国はほかにない                                                  

 

関西より馴染みなき言葉の行き交う、東洋人の大阪なる京城         

朱の夕霧淀みなく沈澱し、とりどりのネオン溶け初むるころ

北よりの大河滔々たる岸辺に歩を留め、北半球の秋を嗅がむ

 

水の移ろい哀しく大都を映す、寡黙な民衆がそれぞれの行き場を探す

   どこもかしこも影人形の館、操手は何処かで札束数える

        生かさず殺さずネジ巻きゃ儲る


 

南回帰線巡礼歌

 

ときのいろどりはらむざわめき

        きびすかえさでさかまくおおせ

        せなにくぐつのとぐろをすくい

     いんがもえにしもせいぐのごとし

                

しおんのたびみちからくりきしみ                              

みだれさきそうせいがのしゃにく

                

くさしおどかしかなきるめいろ

                        ろれつもつれてもがくいけとり

                りんきのがさでためしのしんじう

        うまれこのかたはかなのうらみ

みたまくるおしもだえたえだえ

 



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美容医療で死なないために: 美容外科・美容医療に纏わるネガティブな問題と近未来への提言


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#シドニーに留学 #南十字星の都    

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