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フィラーの避けて通れない基礎知識

  • 執筆者の写真: HIKO HYAKUSOKU
    HIKO HYAKUSOKU
  • 12 分前
  • 読了時間: 5分

フィラーすなわち注入異物の歴史は、#豊胸術に始まる。最も古い文献では、19世紀後半から20世紀初頭に、ドイツで陰茎にパラフィンを注入して、悲惨なシコリを遺した、というのがある。

以下に、豊胸術の歴史に登場する、異物(フィラー)について、概略を箇条書きにする。

 

パラフィン、ワセリン、シリコンジェル注入の時代:とくに戦後の日本では、異物の注入による豊胸術が半ば闇で行われ、異物もパラフィン・ワセリンなどの炭化水素から、シリコンジェルに至り、シコリの形成や変形、異物の皮膚への染み出し、自己免疫疾患であるヒト・アジュバント病の罹患などの惨害を遺した。


シリコンバッグの時代:1980年頃からは、世界的に、シリコンジェルをシリコンラバーなどのバッグに封入した、バッグプロテーゼが市販され、腋窩部や乳房下部から挿入された。しかし、カプセル形成によるシコリや、破裂や劣化により、シリコンジェルの注入と同様な後遺症が発生することもあった。


生食バッグの時代:1990年代は、生理食塩水バッグ(生食バッグ)が世界を席巻した。しかし、感触が悪い、外力や気圧の急変で破潰しやすいなどの欠点から、長くは続かなかった。


コヒーシブシリコンバッグの時代:2000年頃からの主流は、バッグが破れても内容物が流出し難い「コヒーシブシリコンバッグ」が用いられるようになった。


その他:しかし、一部でハイドロジェルの注入やハイドロジェルバッグの埋入、正しくない方法での脂肪注入なども行われ、感染による皮膚壊死や乳癌との区別の難しい、シコリの形成という後遺症を多数遺している。


悪性リンパ腫の発生:更に最近では、欧米でテクスチャータイプのバッグ(バッグの表面がザラザラしている)による悪性リンパ腫の発生も稀にあるとの報告があり、我が国でも発生しているが、頻度は。極めて少ない


乳癌の合併について:シリコンに発癌性がないことは実験的にも臨床的にも証明されているが、ハイドロジェルとくにポリアクリラミドが単体になると発癌性が懸念されている。シリコンにせよ、脂肪注入にせよ、シコリを作る可能性があるので、乳癌の自己診断や早期発見を阻害することは明白である。

 


シリコンジェル注入後の乳がん合併例。右はそのマンモグラフィー。異物肉芽腫とガンは陰影の濃度で判別できる。しかし、より早期の発見は困難と思われる。
シリコンジェル注入後の乳がん合併例。右はそのマンモグラフィー。異物肉芽腫とガンは陰影の濃度で判別できる。しかし、より早期の発見は困難と思われる。

シリコンジェル注入の後遺症―乳房の変形とシリコンの皮膚への染み出し。


炭化水素系異物とシリコンジェルの二重注入による乳房の変形。
炭化水素系異物とシリコンジェルの二重注入による乳房の変形。

数十年経過したシリコンバッグの被膜の劣化により、内容のシリコンジェルが漏出。 
数十年経過したシリコンバッグの被膜の劣化により、内容のシリコンジェルが漏出。 

参考書籍:百束比古著 バストを大きくする前に読んでおく本(アマゾン出版)

 

 

顔面への注入フィラーについて

 

顔のシワ取り、下眼瞼のゴルゴライン、下口唇のマリオネットライン、法令線や水疱瘡後の凹みなどをフィラー(注入剤)で充填する施術後のトラブルがありえます。フィラーの殆どはヒアルロン酸やコラーゲンなどの数ヶ月から1年で吸収される物質なので、期待通りの結果が得られなくても、多くの場合いずれ吸収消失する。また、ヒアルロン酸にはヒアルロニダーゼと言う分解剤があるので、吸収される前に除去することも不可能では。ない

 

しかし、顔面へのフィラー注入は種々の以下に列挙するようなトラブルがある。


1.  シコリの形成 特に下眼瞼に生じる。

2.  アレルギー反応による皮膚異常。ヒアルロン酸ではまれに見られる。 

3.  血管内注入や血管圧迫による皮膚の炎症さらに壊死

多くは動脈塞栓であり、口唇部、鼻翼部に起こり得る。鼻根部で眼動脈に注入して失明したケースもあると聞く。

4.感染 不潔な操作や毛穴や皮脂腺の炎症の波及によって起こり得る。

5.年余を経ても消失しない。


どうも、非吸収性物質だったようだ。純粋な吸収性フィラーでは、余程一塊として注入しない限り消失るが、半永久的に吸収されないことがメリットのように説明されて、非吸収生物質がフィラーとして、使用される場合がある。その場合は皮膚を切らない限り除去できない。

 



(左)ヒアルロン酸注入にアレルギー反応を示した例(青木律氏提供)。(右)非吸収性フィラーによるシコリの形成。

(左)15年前にしわ取り目的で顔にシリコンを注入され、異物反応で腫脹した。[右]20年前に顔面にシリコンを注入された。

 

注:ヒアルロン酸などの吸収性物質の注入について

ヒアルロン酸などの吸収性物質は皮下に少量づつ分散させて注入した場合は、半年から1年で吸収されてなくなりますが、一部分に大量に、例えば小指頭大まとめて注入すれば、異物反応で周りにカプセルを形成し、吸収されないことがあります。この場合は分解酵素(ヒアルロニダーゼ)の注射によって溶解させなければなりません。しかし,分解酵素で炎症をきたして皮膚に色素沈着などを遺すことや、シコリが遺ることもあり、注意が必要です。

さらに、ヒアルロン酸の乳房注入による豊胸術があります。しかしこれは、ヒアルロン酸の誤った使用方法と考えます。たとえ吸収性物質でも、一箇所に大量に注入されれば異物肉芽腫のシコリができ、吸収を阻害する確率が上がります。


スクエアクリニック公式HP


警鐘!美容医療の落とし穴: 〜美容外科・美容医療に 纏わるトラブルや後遺症集


美容医療で死なないために: 美容外科・美容医療に纏わるネガティブな問題と近未来への提言


北岡冬木全詩集



#フィラー #豊胸術

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