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  • 執筆者の写真HIKO HYAKUSOKU

美容医療の近未来への提言

美容産業の普遍化は留まらず、美容医療#の需要はますます拡大の一途を辿っています。今後美容医療を受ける患者さんの幸福と危険回避のために、幾つかの提言を致します。

 

 

1.美容産業における医師の立場の確定―グレイゾーンの白黒明確化を望む

 

美容に関する産業の経済的成長は著しく、美容院、化粧品、サプリメント、エステ、鍼灸、から筋トレ、ヨガなどのフィットネスまであります。

ここで、医師が関与するものには、身体に物理的侵襲を与えるもの、観血的侵襲を与えるものと言うことになります。

具体的に言えば、身体の組織に何らかの侵襲を与える、レーザー#、IPL#などのフラッシュランプ、超音波機器、点滴や注射、手術、と言う事になります。この中で、エステサロンで医師の指導なく、非医療者が行っている、永久脱毛#やたるみとり、などは厳密には医師の介在が必要です。しかし、現実にはグレイゾーンとして存在しています。勿論、メディカル脱毛として、医師の指導があるクリニックもありますが、大半の脱毛サロンは医師と無関係で営業しています。たるみとりの超音波機器は神経障害などの合併症を来すことがあり、本来医療機器ですが、医師のいないエステサロンでも使用されており、社会的な問題となっています。

結局は、医療は厚労省、機器は経産省、という縦割り行政の弊害が、このグレイゾーンを解消できない遠因ではないでしょうか。実際、嘗て私が理事として出席していた脱毛などに関する会議に、常に厚労省の役人が参加していたのを思い出しました。目的はわかりませんが、グレイゾーンを黙認しているようで、医師としては不愉快でした。

追加ですが、有名な脱毛は医療行為であることを確認した、ドク高裁判というのがあります。確か大阪での裁判で、高橋医師(ドク高)が原告で脱毛は人体の組織に焼灼などの侵襲を与えるのだから、完全な医療行為である、との判決が出たとのことです。それからは、エステ脱毛は「永久脱毛」の広告文句が使えず、単に「脱毛」になったようです。要するに、永久脱毛は毛根などにある幹細胞の焼灼が必要ですが、それはやっていません、というスタンスもしくはポーズになったと聞きました。

そこで、メディカル脱毛のクリニックが増えたようです。

また、超音波機器は医師の指導がなければ、使うべきではないので、業者は単なるエステサロンには売らないで貰いたいと思います。

 

2.理想的な豊胸術の追究―いずれ完成すると信じたい

 

映像文化の発達も顕著とあって、女性の体形に関する興味も高まり、とくにバストの大きさは大きくできるものなら大きくしたいと言う願望は、元々大きな女性以外では全員がお持ちのようです。そこで、古今東西様々な豊胸術#が編み出されてきました。これ程医療が発達したのに、いまだに安全かつ確実な豊胸術はない、というのが現在の結論であるのは誠に残念です。

豊胸術には、美容の目的以外でも乳癌手術後の乳房再建#と言う目的もあります。現在最も安全とされる方法は、破れても内容物が漏出しない、コヒーシブ・シリコンバッグの埋入があります。しかし、やはり破損のリスクはあるし、レントゲン(CTも含む)で描出される恥ずかしさから、健康診断を躊躇する女性もいるようです。また、美容目的の場合、両脇に入口部のキズアトが遺るリスクもあります。

注射で入れる方法で比較的有効とされるのが、自家脂肪注入#です。しかし、脂肪は生着し難く、石灰化や異物肉芽腫による、多数のシコリが遺り、乳癌の早期自己診断の阻害要因となります。あた、死んだ脂肪細胞と脂肪は、かつてのワセリンやパラフィンのような炭化水素系異物となって、乳房内に多くの異物性硬結(シコリ)を生み出します。

これを最小限とするため、2000年代にコールマンと言う米国の形成外科医は、自家脂肪を小さく分割し、乳腺下に時間をかけて丁寧に注入する方法が、脂肪の生着率を上げるのに有効だと報告しました。確かに、嘗ての吸引脂肪をそのまま注入するとい言った、雑な方法よりシコリの形成は少なくなると思いますが、シコリが遺る限り早期乳癌の自己診断を邪魔することには変わりないと思います。

また、現某医大教授が、脂肪細胞由来幹細胞を、注入脂肪に混ぜることで、脂肪細胞の生着を促進するという発想で、種々の研究をされていますが、目的の遂行に効果はあるのかもしれませんが、未だ脂肪細胞の100%生着には至らず、求められる理想的な豊胸術の完成には至っていません。さらに、最近では、ナノファット、コンデンスリッチファットなどと言う、精製して液体のようにした物を注入して、幹細胞が脂肪増殖に貢献することを、期待した方法も行われているようです。

 

では、近未来的にどのような豊胸術が望まれるでしょうか。

①   傷が出来ず、注入できること。

②   乳癌の自己診断を阻害する「シコリ」ができないこと。

③   死ぬまで柔らかな感触を保つこと。

④   発癌性や全身的合併疾患がないこと。

⑤   異物性がないこと。

⑥   流動したり他部位に移動しないこと。

⑦   貪食細胞に貪食されて他部位もしくは全身に転移しないこと。

以上のような条件を全て満たすような物質か、或いは自己の脂肪細胞の制御可能かつ発癌性のない増殖方法が開発されれば、理想的な豊胸術の完成と言えるでしょう。近未来には必ず完成すると期待します。

 

3.傷跡の消せる方法の開発―傷跡は絶対に消せない

 

これは全ての美容形成外科医のみならず、外科医の夢であります。形成外科の研究では瘢痕とその究極・最悪の形であるケロイドの成因と治療法の追究は、様々なアプローチからなされていますが、いまだに結論は出ず、決定的な治療法は開発されていません。

形成外科学では、より目立たない傷跡の縫い方や幾何学的手術法が開発されつつあり、ケロイドの治療についても、ステロイド療法や術後放射線照射療法など、有効な方法の実践がされています。

しかし、キズアトの遺らない手術法やケロイドの決定的な治療法はありません。高等動物である人間では、創傷治癒が線維組織でなされる限り、この課題の征服は困難かと思います。

 

4.AIの活用―手術をするのは人間である

 

既に、ある美容外科チェーンでは二重術#の前に、二重の幅をAIを使って選択させているようですが、実際に希望した通りの結果が得られるかは微妙です。それは、技術的な事もさることながら、人間の体は切って縫ったらしばらく腫れますし、また正面からだけではなく、立体的に捉える必要があり、さらに表情も加味したら、中々希望通りにはいかないと思います。

よく映像スターの写真を持参し、こう言う外見になりたいと言ってくる患者さんがいますが、仕上がりが希望と違うなどとトラブルになりがちです。

少なくともAIの映像は参考にはなりますが、AIが手術するならともかく、人間が手術する限り、齟齬が表れても仕方がありません。

 

5.美容外科医の教育機関の設置―症例を重ねないと良い外科医は育たない

 

外科医[百束比古1] と言うのは、大学を出て国家試験に合格し、2年間の臨床研修医を経て、後期研修医または専修医になります。それを5,6年経験してから専門医試験に合格して一人前になると言われています。

しかし、美容外科医と言うのは、幾つかの経路があるので列挙します。

①   形成外科専門医取得後、数年研修して美容外科専門医試験に合格する。これが、正規の経路で、日本美容外科学会(JSAPS)に所属し

国際美容外科学会(ISAPS)に認められている経路である。

②   日本美容外科学会(JSAS)に所属し、形成外科の専門医でなくとも独自に制定された美容外科専門医になる。

③   臨床研修医終了後、いずれかの美容外科チェーンに就職して、そこで美容外科を習う。

以上の様に、大学病院で指導的立場になるには、①の経路が必要ですが、多くの美容クリニックに勤めるのであれば、②③の経路もあると言うことです。しかし、美容外科の基本は形成外科であり、臨床研修後いきなり美容外科医を自称するのは、技量の上でも知識の上でも私は危険だと思います。

美容クリニックのホームページには医師の経歴など記載されていますが、どこそこの形成外科を研修とか、皮膚科や整形外科を研修と書いてあっても一定期間以上所属がなければ、研修したとは言えません。一定期間というのは専門医取得の必要条件の期間ですので、5年程度です。それを、3か月所属しただけで研修したとは言えません。期間の記載のない経歴は信用しないで下さい。

改めて、美容医療に携わる医師の教育について考えて見たいと思います。医師の卒後教育の場は通常大学の講座(医局)であります。しかし、美容医療を受けたいと言う患者さんは直接大学病院に来診することはあまりありません。殆どの患者さんは、広告に誘導されてチェーン店の美容クリニックを訪れます。しかし、実際に診療に携わる医師は、数をしこなして多くの経験をしないと真っ当な外科医になれません。ここに大いなる矛盾が生じます。

大学病院で数をこなせないのに、どうして専門医を作れるのでしょうか。結局形成外科専門医がチェーン店型のクリニックにアルバイト医師として出向き、症例数をこなすしかありません。ところが昨今の厚労省主導の医師の働き方改革では、非正規の医師のアルバイトは制限されるようです。これでは、形成外科専門医の美容外科専門医資格取得に障害が出かねません。日本美容外科学会(JSAPS)はこの点を厚労省に強く進言すべきです。美容医療を受ける国民の不利益の解消こそ急務ではないでしょうか。

 

注:この文章は、百束比古著、「美容医療で死なないために」からの引用改変である。

 

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美容医療で死なないために: 美容外科・美容医療に纏わるネガティブな問題と近未来への提言


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