新項目:形成外科・美容外科における芸術作品―日本医科大学形成外科在籍中の作品供覧

百束比古医師の診察可能なクリニック
水道橋スクエアクリニックデンタル医科部門
皮膚科形成美容外科泌尿器科(保険対応あり、原則予約制)
<住所>
〒101-0061東京都千代田区神田三崎町2-9-12弥栄(いやさか)ビル3階(神田三崎神社隣)
<TEL>
03-6272-8787
百束 比古プロフィール
23.#豊胸術後遺症の救済手術1.充填異物の画像診断
女性のバストを豊かにする、豊胸術は、既に半世紀以上の歴史を刻んでいますが、未だに絶対安全かつ効果的な方法はありません。
もしあれば、より多くの女性の夢が叶うのですが、残念ながら現在の医療では不可能と言わざるを得ません。
以下に我が国における#豊胸術の時代変遷について、概略説明しておきます。
また、それぞれの画像についても提示します。
① パラフィン、ワセリン、シリコンジェル注入の時代:戦後の日本では、異物の注入による豊胸術が半ば闇で行われ、異物もパラフィン・ワセリンなどの炭化水素からシリコンジェルに至り、シコリの形成や変形、異物の皮膚への染み出し、自己免疫疾患であるヒト・アジュバント病の罹患などの惨害を遺しました。

炭化水素(パラフィン)による豊胸術の画像。
(左上)豊胸術後。触ると固いシコリになっている。(右上)そのマンモグラフィー。注入されたパラフィンは透亮像(びまん性に透明に抜ける)として映る。
(下左)そのCT像。X線なので、矢張り透亮像(びまん性に透明に抜ける)として映る。(下中)MRIのT1強調像。陰影として映る。(下右)MRIのT2強調像。やや弱い陰影として映る。
シリコン注入
X-p:radiopaque
CT:radiopaque
MRI T1/T2:Iso/High
注入シリコンジェルによる豊胸術の画像。

(上左)そのマンモグラフィー
(上右)そのCT像。陰影として映る。(下左)MRIのT1強調。
シリコンジェルは脂肪と同じくらいの濃度。(下右)MRIのT2強調。シリコンジェルは脂肪より濃い濃度。
➁シリコンバッグの時代:1980年頃からは、シリコンジェルをシリコンラバーなどのバッグに封入したバッグプロテーゼが市販され、腋窩部や乳房下部から挿入されました。しかし、カプセル形成によるシコリや破裂、劣化によりシリコンジェルの注入と同様な後遺症が発生することもありました。

シリコンバッグの画像。(上)マンモグラフィー像。陰影として明確に映る。(下左)CT画像。やはり陰影として明確に映る。(下中)MRIのT1強調。透亮像である。(下右)MRIのT2強調。陰影である。
➂生食バッグの時代:1990年代は、生理食塩水バッグ(生食バッグ)が世界を席巻しました。しかし、感触が悪い、外力や気圧の急変で破潰しやすいなどの欠点から、長くは続きませんでした。

生理食塩水バッグの画像。(上左)臨床像。(上右)そのマンモグラフィー。透亮像である。(下左)CT像。透亮像である。(下中)MRI T1強調像。透亮像である。(下右)T2
強調像は濃い陰影である。
④ コヒーシブ・シリコンバッグの時代:2000年頃からの主流は、バッグが破れても内容物が流出し難い「コヒーシブ・シリコンバッグ」が用いられるようになりました。
画像はシリコンバッグの画像に準ずる。
⑤ 高度化された脂肪注入の時代:21世紀に入り、脂肪細胞の生着率を上げるための、種々の高度化された自家脂肪注入法が開発されました。その一つは、米国のコールマンによる、細分化された自家脂肪の散在化する注入法であり、1か所に大きな塊を作らないという目的があります。もう一つは日本の吉村(自治医大教授)による、脂肪幹細胞を添加する方法です。さらに、最近では、ナノファット、コンデンスリッチファットなどと言う、精製して液体のようにした物を注入して、幹細胞が脂肪増殖に貢献することを、期待した方法も行われているようです。
脂肪注入術の後遺症の画像。
(左)臨床像。多発性のシコリが存在するので、マーキングした。(中)そのマンモグラフィー。注入された脂肪は透亮像であるが、その周囲を取り囲む異物肉芽腫は、陰影を呈する。(右)そのCT画像。とくに異物肉芽腫の陰影が目立つ。なお、MRI画像はあまり特徴がないので省略する。

⑥ その他:また、一部でポリアクリルアミドを内包したハイドロジェルバッグ(CMCバッグTM)の埋入、ハイドロジェル(ヒアルロン酸も含む)の注入や正しくない安易な方法での脂肪注入なども行われ、感染による皮膚壊死や乳癌との区別の難しいシコリの形成という後遺症を生み出しています。
ハイドロジェルバッグ(CMC Bag TM)の画像。
(上左)そのマンモグラフィー。透亮像である。(上右)摘出の臨床像。
(下左)そのCT像。やはり透亮像である。(下中)MRI T!強調像。やや透亮像である。(下右)濃い陰影である。
ハイドロジェル(ポリアクリルアミド)注入の画像。
(上左)そのマンモグラフィー。雲状の陰影を呈する。(上右張り出し)その摘除の状態。(下左)そのCT像。雲状陰影である。(下中)MRI T1強調像。(下右)MRI T1強調像。
注1:悪性リンパ腫の発生:更に最近では、欧米でテクスチャータイプのバッグ(バッグの表面がザラザラしている)による悪性リンパ腫の発生も稀にあるとの報告があり、我が国でも発生しています。しかし、その因果関係は未だ不明です。
注2:乳癌の合併については、シリコンに発癌性がないことは実験的にも臨床的にも証明されていますが、ハイドロジェルとくにポリアクリラミドが単体になると発癌性が懸念されています。シリコンにせよ、脂肪注入にせよ、シコリを作る可能性があるので乳癌の自己診断や早期発見を阻害することは明白です。
長期に見て、乳癌の自己診断が遅れて、残念ながら死に至ると言う事は、稀にあるので注意が必要です。
まとめ:豊胸術後の画像診断の種類とそれで何がわかるのか
乳房の画像診断には、「乳房軟部撮影」「マンモグラフィー」「超音波」「CT」「MRI」があります。それぞれの画像の特徴と何がわかるのか、について簡単に説明します。
① 乳房軟部撮影
側面からの撮影像で、バッグか注入か、バッグであれば大胸筋の上か下か、破れていないか、胸壁との関係と言った情報が得られます。ただ解像度が高くないので乳癌と異物肉芽腫の鑑別までは困難です。
② マンモグラフィー
側面像と上下像が撮影できます。異物の種類、バッグか注入か、バッグの破損の有無の評価、乳癌と異物肉芽腫の鑑別などが可能です。但し、乳房全体は映りませんので筋肉や胸壁まではわかりません。また、撮影時に乳房を板の様なもので挟みますので痛いこともあります。バッグは破裂の危険があるので撮影を拒否されることがあります。
③ 超音波(エコー)
バッグか注入かがわかります。バッグの破損もわかることがありますが、折れ曲がりを破損と誤診することもあります。乳癌の発見も可能なことがあります。異物の種類はあまり明確にはわかりません。X線ではないので、被爆しません。
④ CT
バッグか注入かがわかります。異物と筋肉や胸壁との関係がわかります。異物の種類がわかります。乳癌と異物肉芽腫との鑑別や早期乳癌の発見にはあまり向いていません。
⑤ MRI
CTと同様、バッグか注入かがわかります。異物と筋肉や胸壁との関係がわかります。異物の種類がわかります。乳癌と異物肉芽腫との鑑別や早期乳癌の発見には向いていません。X線ではないので被爆しません。但し、プレートやペースメーカーのような金属が体内にあったり、入れ墨を施されていると撮影を拒否されることがあります。
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